※本編の文章は FOLK/N デザイナー 太田寿氏による書き下ろしです。
— Folk/N × Centinela × max’s —
一緒に旅をした時間がある、というのはやはり大きい。
ただ商品を見て仕入れる、という関係ではなく、同じ土地の空気を吸い、同じ景色を見て、同じ温度で話をした時間がある。今回のチマヨベストは、そんな時間の延長線上で生まれた一着です。



近谷さんとニューメキシコを訪れたのは、コロナ禍が明け、久しぶりに現地を歩くことができたタイミングでした。移動の途中、何度も訪れてきたチマヨ村にも、自然な流れで立ち寄ることになりました。
「これまで何度も来ているのに自分用のチマヨベストは一枚も持っていない。」
ふと気づいたその事実が、今回の制作の出発点でした。

それなら、自分が本当に着たいと思える一着を、ちゃんとお願いして作ってもらおう。
その相手として思い浮かんだのが、Centinela Traditional Arts でした。
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センチネラは、チマヨ織の中でも少し特別な存在です。
多くの工房が伝統を大切に守り続ける中で、彼らはパターンの研究やウィーバーの育成、天然素材による色出しなど、常に更新を続けている。
そこに良い意味での前衛性を感じていました。




「伝統を壊すわけじゃない。でも、止まってもいない。その姿勢にずっと惹かれていました。」
今回のベストを考えるうえで最初に決めていたことがあります。
それは、いわゆる“チマヨらしさ”を前面に出しすぎないことでした。



色や柄だけで語られてしまうチマヨベストではなく、
服として自然に成立するものにしたかった。
一方で、チマヨベストであることから逃げる気もなかった。



その間を探る中で辿り着いたのが、プルオーバー型でサイドボタン仕様という形です。
フロントはやや短く、バックは少し長めに。
柄は従来の縦構成ではなく横使いにし、前後で視覚的な繋がりを持たせています。
「主張は強くないけど、ちゃんと見れば分かる。そんなバランスを意識しました。」
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だから正面から見ると、柄は控えめです。
一見すると静かで、少し地味にも見えるかもしれない。
でもそれは意図したものです。

主張しすぎないことで、着る人の生活に入り込める余地を残したかった。
このベストは、まず「形」として受け取ってもらえたらと思っています。
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その考え方は、構造にも表れています。
プルオーバー仕様に、サイドボタン。
着脱のしやすさを最優先したというより、ベストというより「被るもの」に近い感覚を大切にしました。

※左右合わせて4個のサイドボタンにはそれぞれヴィンテージの25セントコイン(計4枚)を使用しております。こちらも太田氏によるハンドメイドの物です。
サイドに入った開きとボタンは、機能というより形のためのもの。
平面ではなく、身体に乗ったときに初めて完成する造形を意識しています。
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背中にだけ残した柄については、
見せるため、というより、消しきれなかった痕跡のような感覚に近いかもしれません。


前で語りすぎず、後ろで少しだけ語る。
そのくらいの距離感が、このベストには合っていると思いました。
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センチネラの織りには、そうした余白を受け止める力があります。

制作は完全なフルオーダー。
使われているウールも、織りも、すべてこの一着のためのものです。
当然ながら量産はできず、同じものがもう一度作られることもありません。
世界にごくわずかしか存在しない一着です。

でも、特別なものとして飾ってほしいわけではありません。
「ちゃんと着てほしいし、生活の中に入ってほしい。」
時間を重ねることで、その人なりの表情が生まれていく
そういう服であってほしいと思っています。


だからこそ、このベストの行き先としてmax’sが自然に浮かびました。
近谷さんがこれまで積み重ねてきた店の時間、人との関係、服との向き合い方。
それを知っているからこそ、「ここに託したい」と思えた。

「近谷さんは、ただ“モノが好き”な人じゃない。
その背景や、人の手が介在する意味をちゃんと理解してくれる人だと思っています。」
Folk/Nとして、このベストに明確な役割を与えようとしたわけではありません。
むしろ、旅と人との関係性が重なった結果、自然に形になったもの。
そういう偶発性も含めて、Folk/Nらしい一着だと感じています。

「今回のプロジェクトにはチマヨ村という場所、そこに伝わる物作りを守っていきたいという気持ちも込められていますか?」という今村さんから頂いた質問ですが
チマヨ村について、「守る」とか「救う」という言葉を使うつもりはありません。
それはあまりにも大きく、少しおこがましい。
ただ、自分たちの選択や行動が、ほんのわずかでも未来に繋がっていくなら、それで十分だと思っています。

このベストも、完成した瞬間がゴールではありません。
誰かが袖を通し、それぞれの時間を重ねていくことで、ようやく完成していくものだと思っています。

どう着るか、どう受け取るか。
その答えは、手にした人に委ねられています。
人と旅と、チマヨベストの話 — FOLK/N デザイナー 太田寿氏 — 完
—Folk/N × Centinela × max’s —
Chimayo Pullover Vest



Color / Natural
Size / Free
Price / ¥198,000-inc tax
(Limited to 4 pieces)
max’s Tokyo , max’s Ebisu 2店舗の店頭にて販売中です。
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オーナー近谷がmax’sとして、”このチマヨベスト”を預かることになったとき、「仕入れた」という感覚では無かったと僕は思います。
太田氏の言う通り、近谷は「ただモノが好きな人」ではなく、max’sを通して世間に物事を発信する時に携わった人や物、背景、その行き先迄を深く考えるオーナーです。
きっと共に回った旅の続きを託された、という感覚だと思います。


※写真は2024年11月ニューメキシコを旅している最中の太田氏(写真左)と近谷(写真右)
誰がどんな想いでここまで辿り着いたのか。
どんな時間と会話の積み重ねの中で、この形に行き着いたのか。
その背景を知ることが出来たからこそ、この一着を“説明する”よりも、“繋ぐ”役割でありたいと思っています。
max’sとして、伝統的でクラシックな形のチマヨベストを現代のファッションとしてどう着るか、どう提案するか。それを考えることは今迄と変わらず好きなことです。
だからこそ今回、太田氏の視点と現代性が静かに加えられたこの一着を、
店として自然に提案し皆様にお伝えして行きたいと私達は思いました。
服は、着られて初めて完成する。

太田氏「どう着るか、どう受け取るか。
その答えは、手にした人に委ねられている。」
僕らは洋服が大好きで服屋の門を叩き、日々洋服に囲まれて過ごしている。
そんな日々の中で店頭、プライベート、SNS、日常から入ってくる沢山の情報が自分自身を頭でっかちにしてしまう事もあるけれど、、もっとシンプルでいい筈。
太田氏が今回のチマヨベストについて口にしていた
「人生を楽しむ為の道具、一個の手段であって欲しい。」
2026年のスタートと共にリフレッシュさせた頭の中。
この言葉がとても響いた。
そして、腑に落ちた。
今村


