カジュアルだけど、品格がある。
そんなパンツを、僕はずっと探していた。
10年前くらいのことだったでしょうか。
一度履いてから、ずっと僕の定番になっているパンツがあります。
初めてこのパンツに脚を通したとき、「あ、これは長く付き合える」と直感した。
それが、BARRY BRICKENの「MARTINE」。
腰まわりと太ももにはほどよい余白があって、リラックスできるのに、裾に向かって美しく絞られるテーパード。
まるで仕立てのいいスラックスを履いたときのような感覚なのに、肩の力が抜けている。
履いていて自然体でいられる。
このバランスの妙こそ、まさに“カジュアルアップ”の理想形。
当時購入したものはコーデュロイ生地。
仕立ての縫製、インタックの立体感と奥行き…。
スラックスほど堅くなく、でもデニムほどラフでもない。
この絶妙な立ち位置が、「しっかり服を着たい」事が多々ある僕にはぴったりだった。
BARRY BRICKENというブランドは、1960年代、メリーランド州ボルチモアで産声を上げました。
創業者のバリー・ブリッケン氏は、10歳の頃から父のパンツ工場で縫製の現場を見て育ち、やがて自身の理想とするパンツを作るべくブランドを立ち上げます。
当時アメリカでは、効率優先の量産カジュアルが主流になっていました。
でも彼はそれに迎合しなかった。
「ドレスパンツのように丁寧で、美しいカジュアルパンツをつくる」
この哲学を貫いた結果、70年代にはバーニーズ・ニューヨークやサックス・フィフス・アベニューといった名門店に名を連ね、東海岸のエリート層から絶大な支持を集めます。
僕が惚れ込んだモデル「MARTINE」は、そんなBARRY BRICKENの哲学をまっすぐ体現したかのような一本。
Made in USA、クラシックなシルエット、上質な仕立て。
スニーカーを合わせれば肩の力が抜けたカジュアルに、革靴やジャケットを羽織れば都会的な“上品な顔”も見せてくれる。
言うなれば、「ただのパンツ」じゃないんです。
その一本があるだけで、自分のスタイルが整う。背筋が伸びる。
服好きの“ちょっとしたこだわり”を、きちんと満たしてくれる一本なんです。
「定番」というものは、飽きず、馴染み、頼れるものだと思います。
信頼できる一本があるだけで、気張らずに履けて、その日着る服に迷った朝でも、自然と手が伸びる。
BARRY BRICKENの「MARTINE」は、履いた瞬間に「ああ、やっぱりいいな」と思わせてくれる。
手持ちの服が、全部少し格好よく見えるような気がする。
季節が変わっても、何年経っても手が伸びる。
そして履いた瞬間、やっぱりいいな、と再確認する。
そういう一本って、皆様にもありますでしょうか。

COLOR : BEIGE
FABRIC : COTTON
SIZE : 30, 32, 34, 36
PRICE : ¥38,000+tax




僕にとって、それがBARRY BRICKENの「MARTINE」。
生地別注という贅沢を経て、製作した一本。
打ち込みの強いウェストポイントのチノクロスを使用した、タフでしなやか、光沢感のある生地は、もはや「上品なチノ」を超えて、「街で履けるドレスパンツ」と言ってもいい。
フォワードプリーツの立体感、腰のラインを拾いすぎないカット。
休日のラフな装いにも、ちょっと気の利いたお店に行くにも通用する。
“ちゃんと服を着たい日”の、自分の味方になる一本です。
そして、アメリカ製。履きこむほどに風合いが増すのも、楽しみのひとつ。





裾はアンフィニッシュ。
ご自身のスタイルに合わせて、裾上げの仕方も選べます。

僕は、あくまでも“チノ”として付き合いたかったので、ラフなたたき仕上げを選びました。
そのほうが、ちょっと気の利いたバーに行く日も、近所の喫茶店にふらりと立ち寄る日も、同じテンションで付き合える気がして。
チノパンは、洗いざらしのシワ感を楽しむのもまた一興。
朝、軽くブラッシングしてそのまま素足にモカシンを合わせるとまた違った表情になる。
でも時には、しっかりプレスを効かせて履きたい日もある。
センタークリースが凛と立ったチノパンに、シャツをタックインしてレザーシューズ。
そんな着こなしが妙にしっくりくる日があるんです。
カジュアルにも、ドレスにも振れる。
だから「MARTINE」は、僕の定番であり続けているのかもしれません。
流行に左右されず、季節をまたぎ、時間を味方にできる。
“長く付き合うこと事の出来る洋服でしか味わえない豊かさ”を、教えてくれるパンツです。
ぜひ一度、手に取って、履いてみてください。
きっと、何気ない一日が、ほんの少し上質に感じられるはずです。
上田